はじめまして、おだんご先生です。
おだんご先生って?
はじめに自己紹介をさせてください。
私は普段、大学で先生をしていて、調理や製菓、とくに「和菓子」について喫食調査や試料を調製する実験などを行う研究をしていています。専門は食べ物に関わる分野なので、大学以外でも子どもから高齢者向けの調理講習会をしたり、レシピを雑誌や本に掲載したり、行政や企業、他大学と産学官連携でなどで商品開発をしています。
好きな食べ物はお団子。趣味はおまんじゅうを包むこと。全国のおいしいお団子を食べることがライフワークとなり、その情報を「おだんご日和」というホームページで発信しています。
ある和菓子の調査では、男女大学生に好きな和菓子を聞いたところ、「お団子」が1位に選ばれた(※1)とか。また大学生とその親(19歳以上の男女)を対象とした和菓子の嗜好調査(※2)では、99%以上が「お団子が好き!」、「年中食べる。」と回答しているように、とにかく、誰からも愛される和菓子の一つ「お団子」。
私はそのお団子のやさしい食感を味わいながら、ほっと和む一息時間が大好きです。
その時間の楽しみ方をこっそり教えます。
お団子ひとつで世界がかわる
まず、人間はおいしいと感じる情報の8割以上を視覚から得ていると言われています。(※3,4)「お団子」という商品プレートや名前を見たり、聞いただけで視覚や聴覚が敏感になり、お店の方がお団子を丁寧に包装してくれる包み紙のデザインや紙の香りで嗅覚からの刺激が脳に伝達して食欲がそそられます。そして、包装を開封するとかわいらしい丸いフォルムが並んでいる玉の数を数えます。竹串を持つと生地の軟らかさや重み、たれやあんの絡まり具合を感じ、手から伝わる触感に期待が高まります。それを大事に口へ運び、一玉ずつ食べると否応なくつぶれるやわらかさと味が、舌の上で次から次へと甘味、塩味、旨味などで味覚を楽ませてくれます。最後に竹串に残る団子生地の名残惜しさは、人間の五感だけではなく、そのとき感じた気持ちまで記憶に残してくれます。
ただお団子を食べるのではなく、「お団子を五感で味わって食べる。」ことで、味わい深い食べ方を楽しむことができます。
和菓子への想い、伝えたいこと
「和菓子は芸術」と呼ばれるほど、美しい食べ物で「和食」では水菓子、「菓子」では和菓子や郷土菓子になる一方で、「食品」としては嗜好品にもなります。
2013年ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」(※5)においては、日本の伝統食として伝承、維持、継承しようと様々な活動がなされ、2020年には東京オリンピックが開催され、海外の方からも興味を持たれる「和食」。もちろん、「和菓子」も注目されることでしょう。
私が和菓子に興味を持ったのは、「なぜ、おはぎってぼたもちともいうんだろう?」「お団子の材料の上新粉って何?」、「練り羊羹と水ようかん、蒸し羊羹の違いって何だろう?」などについて、先人の知恵と科学であふれていることを学んだからです。これらは「食文化」や「製菓科学」という学問の中で解明されているものが多く、私は「日本人って、日本って素晴らしい!」と感激したことを覚えています。
ここでは、そんな「和菓子」について「おだんご談義」風に伝えられたらと思います。
参考文献
(※1)村上陽子(2009),和菓子の噂好性および喫食状況に関する研究,静岡大学教育学部研究報告(自然科学篇),59,21-36
(※2)芝崎本実,渡辺敦子,名倉秀子(2015),6種類の和菓子の喫食状況調査,十文字学園女子大学紀要,46,67-80
(※3)教育機器編集編(1972),「産業教育機器システム便覧(五感による知覚の割合)」,日科技連出版社,東京,p4
(※4)照明学会編(1978),「屋内照明のガイド(人間の5感の情報能力)」,電気書院,東京,p9
(※5)江原絢子(2015),ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化とその保護と継承,日本調理科学会誌,48,320-324