和菓子の種類の中で、1個あたりの大きさがダントツトップを誇るどら焼き(※1)。
どら焼きの名前の由来、関西では全く違う名前で呼ばれている?
和菓子では焼き物類の1つで、小麦粉、砂糖、卵などを混合した生地を銅板に丸く流し、「ふわっ」と膨らんだところをひっくり返して、両面を焼いたものが皮となります。
その皮を2枚重ねて、間にあんを挟むと中央がこんもりと膨らみ、横から見るとUFOのような、なんとも言えない美しい円盤型になります。
それが「楽器の銅鑼に似ている」ことから関東では「銅鑼焼き」、「どら焼き」と呼ばれるようになりました。
一方、関西地方では、「あまの原 ふりさけ見れば春日なる 三笠の山にいでし月かも」の百人一首の歌からとった名前で「三笠(みかさ)」とも呼ばれています(※2)。
「三笠山に出た満月」にどら焼きの丸いイメージが重なったのでしょう。また三笠山は奈良県にあり美しい稜線を描いています。
その様子がどら焼きの曲線にもなぞられ、「三笠」という名前で親しまれるようになったと言います(※3)。
そのような美しい形を名前にしたどら焼きですが、実はどら焼きには色々な形が存在します。
銅鑼型だけじゃない。なんとも珍しい形のどら焼きとは?
京都の「笹屋伊織」ではどら焼きは「東寺ご用達だったことから生まれた菓子」とされ、一日二食の僧侶のおやつとして依頼されて作ったものとも。
古い銅鑼で焼いた小麦粉の薄皮で餡を巻き、竹の皮で包んだ筒形のどら焼き(※4)。
今では、毎月弘法大師の命日である21日とその前後の3日間のみの限定品で売られています。
切った面を見るとバウムクーヘンのような層が出来ていて、もちもちとしたしっとり皮の中心にはこし餡が位置しています。
(出典:笹屋伊織)
それにしても、ふわふわのパンケーキのような魅力的などら焼きの皮。
料理において豆を早く軟らかく煮るときやあくの強い山菜などをゆでるときに使われる「重曹」がどら焼きの皮作りに使われる事が多く、皮生地を膨らませる膨化剤の役割(※3)を担っています。
どら焼きの生地の材料である小麦粉、水の中に重曹を加えて加熱すると二酸化炭素が発生し生地が膨らみ始めます(※4)。
さらに、黄金色の皮の焼き色は、重曹に含まれるアルカリ性の炭酸ナトリウムが小麦粉中のフラボノイド色素に反応し、より黄色くなります(※5)。
焼き色にも食欲をそそられますが、独特な重曹の残り香も懐かしい香りとして楽しめます。
テレビのアニメに出てくるあるキャラクーの大好物でもある「どら焼き」。
大きさも味も香りも、そして食感も小腹を満たすには最高のおやつとして、これからも世代を超えて愛される和菓子であり続けてほしいですね!
参考文献
(※1)新しい食生活を考える会、「新ビジュアル食品成分表」大修館書店、p204(2005)
(※2)新星出版社編集部、「和菓子と日本茶の教科書」、新星出版社、p110(2009)
(※3)㈳日本フードライセンス国際協会、「和菓子コーディネーター2級、3級検定教本」、書肆侃侃房、(2013)、p63
(※4)西本譲、「菓子ひなみ」、京都新聞出版センター、p23(2007)
(※5)高橋節子、「和菓子の魅力―素材の特性とおいしさー」、建帛社、p100(2012)