こんにちは!おだんごです♪
今年の夏は、うだるような猛暑日が少ないと感じています。かき氷を食べても、これだけお天気が曇りだとなんだか残念に感じてしまいますよね。
昔の貴族の涼み方、庶民の涼み方
とは言うものの30度を超える暑い日もあります。
今でこそエアコンや扇風機で涼んだり、冷蔵庫の冷たい飲み物を飲んだり、冷凍庫のアイスを食べたり、夏の暑さしのぐことができます。
それらがなかった時代には、どのようにして夏の暑さをしのいでいたのでしょうか?
昔は、冬の間に池や湖で凍った氷を切り出して、氷室と呼ばれる土の中に保管していました。昔の人は土の中は温度が高くならず、氷が溶けにくいことを知っていたのでしょう。かの清少納言が書いた『枕草子』では、「削り氷にあまづら入れて、新しき金まりに入れたる。」と書かれています。夏になると涼しさを求めて、保管していた氷を取り出し、削ったかき氷に、植物からとった甘い樹液を煮詰めたもの(あまづら)をかけて食べたと言われています。
一方で、庶民の夏の涼み方には、目や耳で夏の涼を感じることも多かったようです。
透明感のあるものや雪をイメージさせるような白いものを見たり、水の音や涼しげな名前を聞くと暑さが和らぐとされていました。和菓子では透明感のある寒天や葛粉(くずこ)、それに蕨粉(わらびこ)を使ったお菓子、みずみずしい舌触りの水ようかんなどが清涼感をあらわしていますよね。
葛は捨てる所がないパーフェクト食材
中でも、葛桜(葛まんじゅう)は葛でんぷんを利用した和菓子で、中の餡がうっすらと透けて見える夏の涼味です。
葛粉と水、砂糖を合わせたものを一度加熱してでんぷんを糊化させたものを生地とします。餡子を包み、まんじゅう状にしたら、蒸し器で再加熱します(※1)。この製法は、作業性と食感の向上を兼ね合わせた和菓子と言えます。
葛は豆科の植物で、山野につるをのばして大きな美しい花を咲かせます。花は染料、葉は家畜の飼料、茎は葛布や工芸品に、根は葛粉の原料となり、捨てることがないといわれている植物です(※2)。さらに葛は体の弱った時に飲む「葛根湯(かっこんとう)」や「葛湯(くずゆ)」として滋養強壮に効果があると言われています。
根の部分から取り出した葛は根茎(こんけい)でんぷんと呼ばれ、蕨粉や馬鈴薯(じゃがいも)でんぷんなどとも仲間になります。ちなみに米や小麦、とうもろこしなどのでんぷんは地上で育つ植物のでんぷんということもあり地上でんぷんと言われます。
ラビッド・ビスコ・アナライザーという粘りを測定する機械があります。同じでんぷんでも水を加えて加熱すると馬鈴薯でんぷんが最も粘りが強く、米やとうもろこしなどのでんぷんは粘りが弱いことがわかります(※3)。(図1)
スーパーで売られているでんぷんはそれぞれの特長を生かして、料理やお菓子に利用されていることがわかります。葛桜は、この時期だけの特別な和菓子です。夏の暑さで食欲のない時は、見た目に涼しく、食べてエネルギーになるでんぷんが多く含まれている「葛桜」と冷たいお茶で、ひと休みはいかがでしょうか?
【写真出典】
吉方庵
【参考文献】
1)亀井千歩子、47都道府県和菓子/郷土菓子百科、丸善出版、p146(2016)
2)天極堂
3)独立行政法人農畜産業振興機構