紅白饅頭

【おだんご談義】第七回:日本の饅頭の歴史。薯蕷まんじゅうはこうやって作られた

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お正月を迎えた新しい年の始まりには、干支の和菓子や紅白のまんじゅうを売っている和菓子屋さんを多く見ます。

特に、紅白まんじゅうはお正月だけでなく、成人式や卒業式など、私たちの節目にかかわることが多い和菓子です。

薯蕷まんじゅう、紅白饅頭

中国から伝わった饅頭の歴史

まんじゅうの歴史は、鎌倉時代までさかのぼり、中国から林浄因(りんじょういん)という人が製法を伝えました。林氏は、饅頭の製法を世に広めた功績をたたえられ、「林神社」のまんじゅうの祖として祀られています。(※1)

まんじゅうが初めて日本に伝わった当初は、小麦粉で作った薄い皮に肉や野菜を包んで蒸したものが一般的でした。

しかし日本では、宗教上の理由から、小豆などの豆を蒸したものに塩味をつけたものをまんじゅうとしていました。甘いまんじゅうは、江戸時代後期に砂糖の国内生産が奨励された後に登場します。(※2)

薯蕷まんじゅうは、いわゆる長いもから作られる

さて、紅白まんじゅうとしてよく作られるものは、「薯蕷まんじゅう」であることが多いです。

「じょうよまんじゅう」と読み、「薯」は訓読みで「いも」ですね。

まんじゅうの皮の部分が大和薯(いも)やつくね薯(いも)などで出来ています。

大和薯、つくね薯

大和薯やつくね薯をすりおろしたものに、砂糖とすりまぜて空気を抱き込ませ、米粉を加えて皮を作り、餡を包んで蒸しあげます。上品な薯の香りと皮の白さに気品を感じる和菓子です。

お正月の寒い時期にピッタリ!薯の優れた効能

薯には昔から消化が良く、今でも「山うなぎ」として別名があるほど、滋養強壮、疲労回復に良い食品とされています。その薯をすりおろすねばねばしたものが現れます。それは、糖がたんぱく質とくっついた植物性粘質物です。オクラやモロヘイヤにも含まれ、体を外敵から守るなどの免疫機能があるとも言われています。また、デンプン分解酵素を持っているため、消化吸収しやすく、滋養強壮に良い食べ物だと昔から言われています。(※2)

お正月に「紅白まんじゅう」を食べるのは、おいしいものを食べすぎてしまった体を労わるため?と思ってしまいますね。

新しい年の始まりには、紅白のめでたい薯蕷饅頭と煎茶を合わせて、これからの抱負を語り合いましょう!

【参考文献】
(※1)小西千鶴、「和菓子のはなし」、新社、旭屋出版、p52-53、2004
(※2)渋川祥子、牧野直子、「料理と栄養の科学」、新星出版、p126-127、2015
(※2)津久井学、ヤマイモ粘質物の性状と構造の解析
(※2)村田勝夫、西條典子、ヨウ素デンプン反応の温故知新

おだんご先生
おだんご先生(芝崎本実:帝京平成大学助教)
和菓子の魅力をアカデミックに紐解いていくコラム。おだんご先生主催のおだんご日和もチェック!
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