桜が次々と花開く季節になりました。
この季節は、ぽかぽかとした陽気の中に、「花冷え」という冬が逆戻りしたかのような日が現れます。
季節の変わり目だからこそ、感じられる日本の四季の移ろいに風情を感じます。
そんな風情や季節の移ろいを見事に表現した和菓子があるのはご存知ですか?
それは「花見団子」。
花見の時期になると、桜の葉を使った餅菓子や桜をかたどった生菓子など、和菓子を春色で満開にしてくれます。
その昔、花見は秋の豊作を願う行事だったと言われていますが、いつしか花をめでる行事に変わりました。
江戸時代中頃には、隅田川沿いにある長命寺の門番が考案した桜の葉で包んだ「桜もち」が花見のお供として大人気となり、江戸の春の風物詩となっていたようです。(※1)
また、その人気ぶりは、歌川広重と歌川豊国の合筆による「江戸自慢三十三興」の絵の中にも描かれています。(※1)

花見の帰りに桜餅を持つ女性(『江戸自慢三十六興 向嶋堤ノ花并ニさくら餅』歌川広重・歌川豊国 画)
また、桜もち以外にも桜を象った和菓子が多くみられます。
その中でも、愛らしい和菓子が「花見団子」。
桃色、白、緑色の三色の団子(※2)は、それぞれ春、冬、夏を表していると言われています。
桃色の団子は春の陽気に心躍る気持ち、白色の団子は寒さに耐えしのいだ寂しい気持ち、緑色の団子は新緑の芽が期待感を寄せる気持ちが一玉一玉に込められていると言われ、一玉食べることに、季節の移ろいを感じることができる和菓子です。
今年は、例年より満開の桜が早く見られそうですね。
是非、桜を見ながら「花見団子」を食べてみてください。
いつもとは違った春の到来を感じることができると思います。
【参考文献】
(※1)富永靖弘、「和菓子とお茶の教科書」、新星出版社、P140-141、2009
(※2)淡交社編集局編、「今月使いたい茶席の和菓子270品」、淡交社、P45、2011